講義ノートの作り方
講義ノートは、1本の Markdown から次のものを作る。
| できるもの | 中身 | 置き場所 |
|---|---|---|
| A4 プリント | 全回を1冊に。表紙・目次つき | build/pdf/<名前>.pdf |
| 回ごとのスライド | 1回分ずつ。タイトルスライドはその回の題と日付 | build/slides/<名前>-slides-<回>.pdf |
| 回ごとの配布資料 | A4 プリントを回ごとに切り出したもの。ページ番号は全体のまま | build/handouts/<名前>-<回>.pdf |
| 台本(使うときだけ) | スライドを A4 に並べ、下に話すことのメモ | build/script/<名前>-notes-<回>.pdf |
作業はすべて VS Code でできる。この手引きは VS Code を使う前提で書き、コマンドは最後にまとめてある。インストールと、論文・分析など講義ノート以外のことは手引きを見る。
始める
左端の Octavo のアイコンでサイドバーを開く。プロジェクトがまだなければ「新しいプロジェクトを作成」で作る(講義ノートだけなら、選ぶ部品は講義ノートだけでよい)。
「原稿」の「原稿を追加…」→「講義ノート」→ 名前(例:
public-policy)と選ぶと、docs/public-policy/public-policy.mdができて開く。冒頭のoutputs: [pdf, slides]が「A4 プリントとスライドを作る」、sessions: trueが「何回分かでできている(スライドは回ごと)」という意味。エディタの右上の PDF のボタン(プレビューを開く)を押す。画面が3つに分かれる:
左 中 右 原稿 A4 プリント カーソルのある回のスライド 保存するたびに組み直される。右の列は、右上の画面のボタンで「スライド」「台本」「表示しない」から選べる。
サイドバーで講義ノートを開くと、中に回の一覧(押すとその回へ飛ぶ)、「回ごとの配布資料を作る」、「この文書の設定」が並ぶ。
原稿の形
---
title: Public Policy
subtitle: Lecture notes
author: Author Name
date: today
outputs: [pdf, slides]
sessions: true
---
Text here goes to the handout only (e.g. how the course runs).
# Session 1: What is public policy?
## Introduction
### Today's aims
- Three things to take home
## Who makes policy?
### Government and the market
Text for both the handout and the slides.
#### A smaller point
# Session 2: Government
- 冒頭の
---で囲んだ部分が表紙になる。date: todayは組んだ日になる。 - 見出しは3段が基本:
#が1回分、##が節、###がスライド1枚。####から下はスライドの中の小見出し(A4 プリントではどれも番号つきの見出し: 1、1.1、1.1.1)。 ##の節はスライドの左上に出る(節ごとに扉のスライドを入れる設定もある)。- 節に分けない回は
##を飛ばしてよい。回の中が##だけなら、##が1枚になる。 - 最初の
#より前に書いたことは、A4 プリントにだけ入る。 - 段落は空行で区切る。箇条書きは
-、入れ子にするときは2字下げる。
回を分ける
# で分ける(ふつうはこれ)
何も書かなければ、# 見出し1つが1回分になる。スライドの名前は出てきた順に <名前>-01, <名前>-02, …。途中に回を挿し込んでも名前を変えたくなければ、見出しに id を付ける:
# Session 2: Government {#government}
これで2回目のスライドは <名前>-government になる(octavo build <名前>-government。PDF は <名前>-slides-government.pdf)。
区切りを書いて分ける
1回が # 1つに収まらないとき(1回で2つの節を進む、節の途中で回が終わる)は、各回の頭に区切りを書く。区切りが1つでもあれば、# は回と関係のないふつうの見出しになる:
\session{} {#week3 date="2026-10-14"}
# Session 3: Policy and government
## Who decides?
### The cabinet
## Bureaucracy
### Staff
- 区切りは1行の
\session{題} {#id date="…" subtitle="…"}。#week3が回の名前(スライドは<名前>-week3)。どれも省ける。前からの::: {.session #week3 …}+:::も同じ意味。 date(とsubtitle)はその回のタイトルスライドに出る。題は回の最初の見出しで、スライドではタイトルスライドに移る。見出しの段は区切りなしと同じ(##節・###1枚)。- 区切りに題を書く(
\session{題})と、それがタイトルスライドの題になり、回の最初の見出しも節としてスライドに残る。そのときも1枚は###のまま。どの段が1枚になるかは講義ノート全体で決まるので、区切りや題を足しても変わらない。 - 回の頭は A4 プリントでも必ず新しいページから始まる(回ごとの配布資料はそこで切る)。
- 最初の区切りより前は、A4 プリントにだけ入る(ガイダンスなど)。
- 区切りを書くと、スライドは
#ではなく区切りごとになる。前に作られたスライド(<名前>-01など)は次に組むときに消え、build/には今のものだけが残る。 - 区切りの後にまだ何もない回(予告として置いた来週の回など)は、スライドを作らない。
- A4 プリントには区切りの
titleとdateは出ない。見出しは書いたとおりに出る。first_sectionが番号を付けるのは回ではなく#の見出し。
スライドの区切りと題
ふつうは ### が1枚。原稿のままでは合わないところだけ、印を付けて直す。どの印も A4 プリントには影響しない。
| したいこと | 書き方 |
|---|---|
| ここから新しいスライドにする | 1行の \newslide |
| 新しいスライドに題を付ける | \newslide{題} |
| 見出しで改スライドしない | 見出しの後ろに {.same-slide} |
| スライドでだけ題を短くする | 見出しの後ろに {slide-title="…"} |
| そのスライドに題を出さない(図に場所を回す) | \newslide{}、見出しなら後ろに {.no-title} |
| A4 プリントで改ページする | 1行の \newpage(スライドには影響しない) |
### A long heading for the handout {slide-title="Short title"}
First half of the text.
\newslide
Second half — on a new slide titled "Short title (cont.)".
### A heading that stays on this slide {.same-slide}
題を書かずに \newslide で区切ると、直前のスライドの題に「(続き)」が付く。前からの ::: {.slide title="…"} + ::: も同じ意味。区切りでできるスライドは、そのときの1枚の段(ふつうは ###)の見出しになる。
1枚に入りきらない中身は、「題(続き)」の1枚に続き、octavo build がそう知らせる。分ける場所を自分で決めたいなら、そこに \newslide を入れる。題のないスライドが入りきらないときは、知らせるだけ。
話すことのメモは ::: notes に書く。スライドにもプリントにも出ず、台本にだけ出る(プレビューの右の列で「台本」を選ぶと見える)。台本には投影するスライドがそのまま縮小して A4 に2枚ずつ並び、それぞれの下にそのスライドに書いたノートが付く:
::: notes
Ask the room first; give the answer after two minutes.
:::
プリントとスライドで中身を変える
囲んだところを、どちらか一方にだけ出す:
::: {.no-slides}
Space for students to write in, longer explanations, footnotes.
:::
::: {.slides-only}
A big figure or one short question.
:::
| 印 | 出るところ |
|---|---|
.no-slides |
プリントだけ。PDF・Word・LaTeX のどれにも出て、スライドと台本には出ない(前からの .handout-only も同じ) |
.slides-only |
スライドと台本だけ |
.pdf-only |
PDF だけ(Word・LaTeX には出ない) |
(.slide-only は .slides-only と同じに読む。)箇条書きの中では囲みの行を項目の本文の桁にそろえ、開きの ::: の前には必ず空行を入れる。空行がないと pandoc は囲みと読まず、::: がそのまま出る。短い文言なら、行の中で […]{.no-slides} と書ける:
- Local government employs most officials.
::: {.no-slides}
- Longer explanation for the handout.
:::
::: {.slides-only}
- One line for the slide.
:::
- Grading: [midterm and final]{.no-slides}[see the handout]{.slides-only}.
「投稿前に検査する」(か octavo check lint)が、囲みとして読まれない ::: と、どの出力にも当たらない印(.handouts-only のような綴り違い)を知らせる。知らせがないと、両方から黙って消える。
一部だけをスライドにする
講義ノートの大半はプリント用で、スライドには一部だけを出したいときは、冒頭に slides_select: marked と書き、スライドにも出す所に .on-slides の印を付ける。印のない所はプリントにだけ出る:
---
slides_select: marked
---
### Government and the market
The long explanation stays in the handout only.
::: {.on-slides}
- The point for the slide
:::
### Comparing institutions {.on-slides}
This whole section goes on the slides too.
::: {.on-slides}の囲み、見出しに{.on-slides}を付けた節、行の中の[…]{.on-slides}がスライドにも出る。.slides-onlyの囲みと::: notesはそのまま出る。- 拾った所の上の見出しは自動で残るので、スライドの題と構成はノートのまま。
- 図・表・式・事例などの番号はプリントと同じ(途中の図を拾わなくても、番号はずれない)。拾わなかった図などを指す参照は、プリントでの番号を文字で書く。印が1つもない回はスライドを作らない。
- サイドバーの「この文書の設定」の「スライドに出すもの」でも切り替えられる。
事例・論点など、番号の付くブロック
::: {.question #question-why title="Why government?"}
Why is government the main actor in public policy?
:::
::: case
No label is needed if nothing refers to it.
:::
| 種類 | 見出し | 番号 |
|---|---|---|
case / question |
事例 / 論点 | 2つで通し番号(事例1.1、論点1.2、…) |
aside / nb / memo |
余談 / 注意 / 付記 | なし |
definition / theorem / example など |
定義 / 定理 / 例 | 別の通し番号 |
- ラベル(
#question-why)も題(title)もなくてよい。::: caseだけでも番号は付く。 - 番号は節(
#)ごとに 1 から振り直す。A4 プリントとスライドで同じ番号になる。 #question-whyのようなラベルを付けておくと、本文で@question-whyと書いたところが「論点1.2」になり、押すとそのブロックへ飛ぶ。ラベルの頭は種類の名前にする。
同じブロックをもう一度出す(復習の回など)。中身は書かず、ラベルだけ指す:
::: {.restate #question-why}
:::
一覧にする(巻末の論点集など):
::: {.list-of .question .case}
:::
::: {.list-of .titles}
:::
1つ目は論点と事例を本文ごと並べ、2つ目(.titles)は番号のある全ブロックを番号・題・ページだけの目次にする。
図・表・文献
{#fig-trend}
As @fig-trend shows, spending rose. See @yamada2020.
- 図は、原稿からの相対パスで貼る(
docs/<名前>/の中から見るので../../)。スライドでは残りの高さに収まるように縮む。 - 図表の出典・注は、そのすぐ後の
::: {.figure-note}+:::に書く。小さい字で同じページに置かれ、脚注も付けられる。スライドでは注の分だけ図が縮む。手引きの図を参照。 - 自分で撮った写真は
figures/に置き、そこから貼る()。 - 手で作る表は、サイドバーの「分析」→「手で作る表を追加…」で表の形の画面から作れる。
- 文献は
literature.bibに入れ、@キーで引く。文献を引いた回のスライドには、最後に参考文献のスライドが付く。A4 プリントでは巻末にまとめて出る。
URL と脚注
See <https://www.e-stat.go.jp/> for the data, or the [statistics portal](https://www.e-stat.go.jp/).
The number of civil servants is small.[^count] A short note can go inline.^[Like this.]
[^count]: Counted in 2024. See <https://www.jinji.go.jp/>.
URL - URL は < と > で囲む(<https://…>)。囲まずに書くと、文字として出るだけでリンクにならない。 - 文字にリンクを付けるなら [文字](URL)。印刷したプリントでは URL が見えないので、紙で読ませたいものは <URL> の形にする。 - PDF ではどちらも押すとブラウザーで開く(プレビューでも)。色は本文と同じ黒。
脚注 - 本文の脚注を付けるところに [^名前]、別の行に [^名前]: 脚注の本文 と書く。名前は何でもよく([^1] でも)、番号は自動で付く。 - 短いものは ^[脚注の本文] で、その場に書ける。 - A4 プリントではそのページの下、スライドではその1枚の下に出る。 - 脚注の本文は同じ回の中に書く(段落のすぐ下がよい)。原稿の最後にまとめると、回ごとのスライドでは本文が見つからず、[^名前] がそのまま出る。
番号を付けない見出し
見出しに {.unnumbered}(短く {-})を付けると、A4 プリントで番号のない見出しになり、次の番号はその見出しがなかったものとして続く。.unlisted も付けると目次にも載らない。スライドの見た目は変わらない。
# Guidance {.unnumbered}
## Next week {-}
## Not in the contents {.unnumbered .unlisted}
付録
見出しに {.appendix} を付けると、そこから後ろが付録になる(A, B, …。A4 プリントでは新しいページから):
# Questions and cases {.appendix}
::: {.list-of .question .case}
:::
体裁を変える
サイドバーで講義ノートを開き、「この文書の設定」から選ぶ。選んだ値は原稿の冒頭(--- の中)に1行で書き込まれ、その講義ノートにだけ効く。手で書いてもよい。名前は 2列目のとおりに書く(first-section-number のような綴り違いは、組むときに知らせが出て、効かない)。
| 設定 | 冒頭に書く行 | 既定 | 何が変わるか |
|---|---|---|---|
| 最初の節の番号 | first_section: 0 |
1 | 0 にするとガイダンスが「0」(図は「図0.1」)になる |
| 改ページする位置 | pagebreak: section |
回ごと | section で # ごと、none で回の区切りのところだけ |
| 本文の書体 | font: … |
BIZ UDゴシック | A4 プリントの本文 |
| 文字の大きさ | fontsize: 10.5pt |
||
| 目次 | toc: false |
出す | A4 プリントの目次 |
| 日付の書式 | date_format: "%Y-%m-%d" |
2026年4月10日 | 表紙とタイトルスライドの日付 |
| 縦横比 | slides_aspect: 4-3 |
16:9 | スライド |
| アクセントカラー | slides_accent: none |
紺 | スライドの見出しなどの色。none で黒一色 |
| 左上の節名 | slides_running_header: false |
出す | スライドの左上 |
A4 プリントの組み方は日本語 LaTeX の jsarticle にならう(1行40字、1ページ36行、段落の頭は1字下げ)。
配る
- A4 プリント・スライド: プレビューに出ているものが、そのまま
build/にある(置き場所はこのページの最初の表)。 - 回ごとの配布資料: 回の区切りを書いた講義ノートなら、保存するたびに裏で作り直される(ステータスバーに「配布資料」が回り、✓ で終わり)。手で作るときは、サイドバーの「回ごとの配布資料を作る」。ページ番号・図や論点の番号は A4 プリント全体と同じ。
- 配る前に、サイドバーの「ツール」→「投稿前に検査する」で、指し先のないラベルやない文献を確かめられる。
早見表
| 書くこと | 書き方 |
|---|---|
| 1回分 | # 題(区切りを書くなら \session{題} {#id date="…"}) |
| 節 | ## 題 |
| スライド1枚 | ### 題 |
| スライドの中の小見出し | #### 題 |
| 回の名前を固定 | # 題 {#id} |
| ここから新しいスライド | \newslide(題は \newslide{題}) |
| 改ページ(A4 プリント) | \newpage |
| 改スライドしない見出し | ### 題 {.same-slide} |
| 題のないスライド | \newslide{} か ### 題 {.no-title} |
| 番号のない見出し | ## 題 {.unnumbered} か {-} |
| スライドでだけ別の題 | ### 題 {slide-title="短い題"} |
| 話すことのメモ | ::: notes … ::: |
| プリントだけ / スライドだけ | ::: {.no-slides} / ::: {.slides-only}、行の中なら […]{.slides-only} |
| 論点(番号つき) | ::: {.question #question-x title="…"} … ::: |
| ブロックを指す | @question-x |
| 再掲 / 一覧 | ::: {.restate #question-x} / ::: {.list-of .question} |
| 図 | {#fig-x}、指すのは @fig-x |
| 図表の出典・注 | すぐ後に ::: {.figure-note} … ::: |
| 結果でない数値 | [40%]{.no-lint} |
| 文献 | @キー |
| URL | <https://…>、文字に付けるなら [文字](https://…) |
| 脚注 | [^名前] と [^名前]: 本文(同じ回の中に)、短いものは ^[本文] |
| 付録 | # 題 {.appendix} |
コマンドで使うなら
VS Code でしていることは、どれもコマンドでもできる:
octavo new lecture public-policy # docs/public-policy/public-policy.md
octavo build public-policy --to pdf --compile # A4 handout
octavo build public-policy --to slides --compile # one deck per session
octavo build public-policy-week3 --to slides # one session only
octavo build public-policy-week3 --to script # its speaker script
octavo build public-policy --sessions # build/handouts/, one PDF per session
octavo extract public-policy --session week3 --cover # one session, with the cover and contents
octavo check # before handing out
コマンドでは、回ごとの配布資料は --sessions を付けたときだけ作り直される。